ホセ・エルナンデスはろくでなしだった。
遠い昔に妹を連れて家を出た母親の顔をシア・エルナンデスはほとんど覚えていなかった。父親のホセは定職につかず、わずかな稼ぎも全て酒と博打につぎ込んでしまう。だが、いくらろくでなしでも、一応は父親だ。まともに生活能力の無いホセを放ってはおけなかった。
その優しさがシアの仇になった。
ホセはドラッグに手を出した。博打の負けを忘れる為にドラッグに酔い、ドラッグを買う金を捻出するために博打にのめり込む。
当然の帰結として、十歳になったばかりのシアはホセの『悪い仲間』に売り飛ばされた。すでにまともな判断力の無いホセが彼女につけた値段はたったの百ドルだった。
どこにでもあるような『どうしようもない話』だ。
だが、シア・エルナンデスはどこにでもいるような無力な少女では無かった。屈強な男にさんざん慰み物にされても彼女は自分を失なわなかった。
暴れ疲れて無抵抗になったと見せておき、シアは自分の口に突き込まれたペニスを思いきり食いちぎった。絶え絶えに悲鳴をあげる男を蹴り飛ばし、三階の窓から飛び降りた。痛む身体を抱えて裏通りを駆けた。
その後の事はよく覚えていない。
気がついた時にはプラザの幹久のスイートにいた。シャワーを浴びせられ、服も着替えさせられ、あったかいココアを飲んでいた。頭を撫でようと伸ばされた手に怯えると、幹久はそれ以上触ろうとはしなかった。
やっと、涙が流れた。色々な思いがない混ぜになって止まらなかった。
詩亞は今でもソーセージが食べられない。