山手紫陽館の烙印

3

「こ、れ、で、よしと」

「ありがとうございます、詩亞さま」

髪を軽く耡いてもらって、七海は着替えを終えた。ふわりとしたスカート、フリルの付いたカチューシャ、鏡に映る自分の姿は見慣れなく、なんだかどきどきする。

「さま付けは無し。詩亞でいい」

着替えを手伝っていた少女が肩を叩きながら七海の顔を覗き込む。短かく切り揃えた赤い髪に赤い肌。日本人では無い。七海よりは少し年上だろうか。

「はい、詩亞さま…さん」

「かしこまらない。みんなここじゃ姉妹みたいなもんなの」

「はい…」

七海の表情が綻ぶ。

昨夜はよく眠れなかった。自分が『メイド』となるのだという事は聞かされていた。だが、具体的な事は一切知らされてはいない。だから不安になる。

布団に潜り込んで涙を滲ませた七海を、同室の詩亞が慰めてくれた。

早く、ここでの生活に慣れなくてはいけないと思う。

「あ…のう、それじゃ」

「うん?」

「詩亞姉さま、って、呼んでもよろしいですか?」

顔を真赤にしながらそんな事を言った。

「私、一人っ子だったから、兄弟が欲しかったんです…けど…あの、御迷惑ですよね、すいません、忘れてください」

「…可愛いいなぁ、この娘は、もぅ」

詩亞はにまーっと相好を崩して七海の頭をくしゃくしゃと撫で回す。

「いいよ、私が七海ちゃんのお姉さんになってあげる」

 

(c) Okada Jun 2001-2002.