山手紫陽館の烙印

12

「で、どこからどこまでが、アンタのさしがねなわけ」

夕月の執務室で二人きりになった時を見計い、詩亞はぶしつけに尋ねた。

「何が?」

表情を変えない夕月に、詩亞はふうん、と鼻を鳴らす。

「ミッキーってさ、実は結構かわいいとこあるのねー。あんなのが私のマスターになってくれたら、とぉっても楽しいだろうなぁぁ」

「駄目! 幹久様は私のです!」

思わず声を荒げた夕月の頬に、はっと朱が差す。詩亞はそれを見てく、くと笑いを噛み殺す。

「滅多に見れない夕月のそんな顔が見れたから、これであいこって事にしといたげる」

「早く仕事に戻りなさい、詩亞」

「へいへい」

と鷹揚に返事をし、詩亞は踵を返す。扉を潛り様、思い出したように、ありがとう、と呟いた

薄暗い室内にランプに照らされて一人きり。

夕月は優しく微笑んでいる。

 

 

(c) Okada Jun 2001-2002.