庭の外れに大きな楡の木が立つ。
滅多に人の寄りつかないそこならば静かに眠れるだろうと思った。
盛り土をシャベルでならし目印に枝を1本折って差した。
壊中電灯の光がまあるく切り取った光景。
小さき者の墓標だ。
「…私は失敗した」
あゆは淡々と呟く。
「お嬢様」
「1人で外に出しちゃいけなかった」
「お嬢様!」
「行かせちゃ…ダメだった」
「それでも…あの子は幸せでした。本来なら無かった命を、お嬢様と会って、一時でも幸せな時間を過ごしたんです。あまり御自分をお責めにならないでください」
そう言って、あゆの肩にそっと手を乗せ
「わかった風な口、聞くなや!」
爆発した。
「私は失敗した。まだ外に慣れていない猫を1人で行かせちゃならなかった。お母様に呼ばれていようがなんだろうが引き止めなきゃならなかった。あそこで窓を閉めちゃいけなかった!」
「お嬢…様…」
「失敗した者が責められないんじゃ何がなんだかわからない。そんなの理不尽さ! 私は責められなきゃいけないのさ!」
遠く野犬の吠える声が寒々とした夜の帳を裂く。
「約束…守れなかった…ごめん、ちび」